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書こうと思いつつなかなか書けなかった感想文。慎泰俊さんの新著「働きながら、社会を変える。――ビジネスパーソン「子どもの貧困」に挑む」は心に重く響く一冊だ。読んだ後に「感想は?」と聞かれたとしても容易に答えることができない。この本で語られているのは、慎さんがNPO法人Living in Peaceで取り組んでいる「子供の貧困問題」の現実と、社会人として本業を持ちながらパートタイムでNPOに取り組む意義である。
子供の貧困問題は、子供には選択肢が少ない(まったくない場合も多い)ことから非常に深刻だ。もちろん子供は親の所有物ではないが、「親の事情」の影響を100%受ける立場でもある。自分自身の経験からも言えることだが、子供は親の決定を受け入れる以外に選択肢はない。 「子どもは親を選ぶことはできない。でも、どんな親の下に生まれ落ちたとしても、社会はその子どもに自由に自分の人生を形作る機会を提供できるはずだ」 慎さんの主張は明確だ。子供は親を選べず、親の事情に従うしかない。その結果に奪われるのは「機会の平等」である。ならば社会が「機会の平等」を提供するべきだし、できるはずだというものだ。社会的セーフネットは、このように「機会」そのものを奪われる立場にあるものに対して強く働くようにすべきだと思う。 (一方で原理的市場主義者(リバタリアン)の立場では、「児童労働」を肯定することで「機会」を提供でき、この種の問題は解決するとする。私はリバタリアン的立場は嫌いではなく、「自発的な児童労働契約」が有効であるという主張も間違っているとは思わないが、日本のような成熟した社会では「教育の機会」を奪われた子供の未来は非常に厳しいのが現実だ。今の日本では教育の機会を奪われた人たちの仕事は極めて限定的で、仕事そのものが存在しない場合もある。日本の閉鎖的システムも問題点の一つではある。なお、上記リバタリアンの主張に関してはウォルター・ブロック(橘玲訳)の「不道徳教育」に詳しい) また慎さんは本著の中で「貧困の連鎖」「虐待の連鎖」についても触れている。特に「貧困の連鎖」については身近に感じることができる。現在生活保護を受けている人たちは、本人も十分な教育を受けていないことが多く、子供の教育の機会の喪失の持つ意味を正しく理解できない場合がある。すなわち教育の機会を提供して将来価値を極大化するのではなく、今の収入を増やそうとする意識が働くため、高等教育を受けるよりも早い段階で働き始めることを奨励する可能性がある。こうした子供達はアルバイトや非正規社員としての仕事に就くことしかできず、経済的に苦しい生活を強いられることになる。慎さんの言う「ホームレスのなかには児童養護施設の出身者が多いという」事実には胸が締め付けられる。親の事情で「機会の平等」を奪われた子供達は大人になっても「機会」は与えられないのかと。 また児童養護施設にいる子供達だけでなく、親とともに生活する子供達の中にもかなりの数虐待を受けている子供達がいると予想される。ある保育園関係者から「虐待を受けている可能性を感じる子供がいるが、現段階では何もできない」という悲痛な声を聞いたこともある。子供の頃虐待を受けていた人から「子供とどう接していいのかわからない」という相談を受けたこともあるそうだ。慎さんによると「虐待が連鎖する確率は三割から五割」と言われているとのこと。 私の住む大阪府は、生活保護世帯数、失業率など負の数字が全国ワーストレベルである。ホームレスや貧困世帯、生活保護世帯はいつも自分の身近に存在した。個人的な印象でしかないが、他の都市と比較すると重苦しい空気すら感じることがある。 一人の親としては子供に「機会」を与え続けること、一人の社会人としては世界に向けて行動を起こすことが大切だと考えさせられた本だ。 最後に、本著の中で慎さんが仰っている「本業を大切にしよう」という主張はとても重要だと思う。慎さんは激務で知られる外資系金融機関で働きながらNPO活動をしている。Living in Peaceでは「本業をしっかりできていない人の参加は基本的に許容していない」そうだ。 「本業でしかるべき成果をあげてから他人のための活動を始めるべき」 他人のための活動が自己実現目的にならないために、この意識は重要だと思う。
by EM-LYON
| 2011-11-23 21:26
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